将棋学習で押さえるべきポイント

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、4月にオンラインの将棋教室を立ち上げて早いもので4か月が経ちました。その間、リアルの教室では接点のなかった約25名の子に新たにご参加いただきました。初めての場に、オンラインで参加するのはとても勇気がいることだと思っています。改めて御礼申し上げます。今回は、夏休みのよいタイミングだと思い、その子達に向けて、将棋の学習で押さえるべきポイントをまとめてお伝えしたいと思います。
(このブログの読者の方には既知の内容だと思いますが、頭の整理にお役立てください。)


対局を積み重ねる

何に取り組むにしても同じだと思いますが、たくさん実践しなければ上手になりません。将棋を指すのが好きだから将棋をやっているはずで、その気持ちを大切に出来る限りたくさん対局しましょう!

将棋スキルの構造

物事に取り組む時に避けて通れないのが基礎固め。将棋の場合、基礎スキルは「読み」「大局観」「形勢判断」の3点です。

建物に例えれば、それらの基礎が土台で、定跡や手筋、最近のAIによる新しい指し方などは上物に該当します。建物を建てるためには土台と上物の両方必要ですが、土台がしっかりしていなければ、いくら良い上物を用意したとしてもぐらついてしまいます。(建物の土台をスポーツの基礎体力と言い換えることもできます。)

そして、それらの基礎スキルの中で、子供がまず鍛えるべきは「読み」の力です。

【参考記事】

「読み」の練習法

では、「読み」の力を鍛えるためにはどうしたらよいでしょうか? その練習に最適なのが詰将棋(や必至、寄せ、囲い崩しの問題)を解くことです。

詰将棋を解くのは終盤力を上げるため、という説明を良く耳にしますが、、、正しくは、詰将棋を解くのは読みの力を上げるため、読みの力が向上した結果、終盤力(もちろん中盤力も)の向上に必要な土台がしっかりする、だと考えています。(と同時に、終盤で競り勝つための詰み、必至、寄せ、囲い崩しの手筋も身に付きます。)

そして、一言で「読み」の力と言っても、スポーツの基礎体力と同様に、”瞬発力”と”持久力”があります。

まずは”瞬発力”を鍛えるために、詰将棋ハンドブックシリーズで練習し、九九レベル(3手詰=10分 1問3秒、5手詰=15分 1問4.5秒、7手詰=20分 1問6秒)で1冊を解くことを目標にやり込みましょう。(ここまで来れば、将棋会館道場の初段になるための「読み」の力が備わったと言えます。)

将棋会館道場の初段以上で、大会での優勝や研修会での昇級などを目指しさらに上達したい子は、瞬間的に手が見える能力だけではなく、考えを練る能力も求められるので、”持久力”も鍛えることをおススメします。これには、詰将棋ハンドブックよりも長い9~15手詰くらいの手数の問題を解く、つまり、一目では解けない、数分考えて頭を整理していかなければ答えに辿り着かない問題を解くこと、が有効です。(そのくらいの手数の問題集、将棋世界の詰将棋サロン、詰将棋パラダイスの小学校/中学校/高校、が該当します。)

【参考記事】

終盤重視!序盤は必要最低限

将棋スキルの構造に記載の通り、将棋は相手の玉を取ったら勝ちというルールから、手が進めば進むほど玉の捕まえることにより関係していくため一手の価値が高まる、つまり、勝敗影響度が高まるという特性があります。

よって、終盤を最重要視して、序盤を必要最低限に取り組んでいただきたいと考えています。

終盤:勝つための剣
序盤:負けないための鎧

という位置付けで、序盤は最低限の知識で互角を目指し、最重要視してやり込んだ終盤で勝つことを目指しましょう。

終盤力は「敵玉を捕まえる力/捕まえられない力」「速度計算」の2点に集約されます。

得意戦法をつくる

最重要視するのは終盤で、序盤は必要最低限、と言っても序盤を何もしなくてもよい、という話ではありません。「読み」=土台、をしっかりさせた上で、「得意戦法」=上物を作りましょう。

戦法を選ぶにあたって前提になるのは、将棋の戦法に優劣はない、です。好きな戦法、指していてしっくりくる戦法を選びましょう。(プロ棋士やAIの世界では、○○の戦法の評価が低い、××の戦法は終わった、などありますが子供の将棋には全く関係ありません。)

そして、その戦法が、基本が身に付きやすい、相手の同意なしで指せる戦法であれば、なお良いと考えています。

大会での優勝や、道場での昇級、昇段を目指すのであれば、抜けなくダブりなく戦法を組み合わせる、つまり、相手がどんな指し方で来ても、準備した形になるように戦法を組み合わせましょう。

低学年や級位者のうちは、定跡を暗記するだけで構いませんが、有段者以上になると定跡の手順の意味を理解することを求められます。

【参考記事】

課題解決のループを回す

最後に、これまで記載したことを押さえた上で、対局から課題を抽出し、課題ベースで練習し対局する、課題解決のループを回してほしいと考えています。


将棋会館道場の初段くらいになったら、棋譜を残して自分の頭で振り返る習慣を作っていただきたいです。自分の棋譜から課題を抽出し練習できれば、上達が加速します。

級位者は、棋力から棋譜を残すことは難しいですが、対局後に良かった点、悪かった点を自分の頭で考えてみるだけでも、全く違ってきます。(その際、その論点が的外れでも全く構わないです。まずは自分の頭で振り返る習慣をつくることが重要です。)

最近は、初心者や級位者のうちからAIを活用する子が一定数いると認識していますが、時期尚早です。AIの活用には、AIが示す候補手と評価値を解釈する力が必要で、基礎スキルだけでなく定跡、手筋の知識が必須です。AIを活用して振り返る時間があれば、その時間で詰将棋を解いたり、対局したりした方が、はるかに学習効果が高いと考えています。

【参考記事】



以上に気を付ければ、将棋の学習で押さえるべきポイントを網羅でき、かつ、学習を効率化できるはずです。貴重な夏休みは、これまでの行動を振り返るよい機会。今後の学習の方向性を検討するための一助になれば幸いです。