前回は、将棋の技術に焦点を当て、スキルの構造についてお伝えしました。
将棋の基礎は、「読み」「大局観」「形勢判断」の3点で、まず子供が鍛えるべきは「読み」の力であり、その練習方法は詰将棋を早く正確に解くこと、将棋は局面が進行すればするほど手の価値=勝敗影響度が高まるため、ゲームの進行とは逆に終盤、中盤、序盤の順に重要度が高いこと、をご理解いただけたと思います。
であれば、終盤の勉強に時間を割き、序盤の勉強はできるだけ簡略化した方が効果的という話になります。今回は、そのために必要になる戦法選択について書きたいと思います。
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戦法を決めるにあたっての原則は、将棋の戦法に優劣はない、です。どんな作戦でも一局です。
(AIの評価値による戦法の優劣の話を耳にする機会が多いですが、プロのみに関係する話です。アマ、特に子供にとっては誤差の範囲で、勝敗に全く影響はありません。)
ただし、戦法を選択するにあたり、いくつか押さえるべきポイントがあります。
(1)基本が身に付きやすい戦法を選ぶ
将棋の基本でまず身に付けるべきは、攻めで言えば、「数の攻め」「攻めは飛角銀桂」、守りであれば「数の受け」「守りは金銀三枚」だと考えています。例えば、棒銀戦法は数の攻めを身に付けるのに最適ですし、振り飛車は美濃囲いに囲いやすく金銀三枚で守る習慣ができます。
まずは、それらの基本で成り立っている戦法を学びましょう。
(2)相手の同意なしで指せる戦法を選ぶ
将棋の戦法には、相手の同意なしで指せる戦法と、相手の同意がないと指せない戦法があります。前者はノーマル(角筋クローズ)振り飛車、後者は横歩取りが代表的な戦法です。
次の(3)を成立させるために、前者に当てはまる戦法に注力し、後者に当てはまる戦法は後回しにした方がいいでしょう。(相手の同意がないと指せない戦法を身に付けるのは、有段者になった後でも遅くない。)
(3)抜けなく、ダブりなく戦法を組み合わせる
道場で昇級、昇段したり、大会でいい成績を残そうとするのであれば、相手がどんな指し方で来ても、準備した形になるように戦法を組み合わせましょう。もし抜け穴があり、展開によって準備していない形になってしまったら、成績が安定しません。
また逆に、戦法が重複している=同じ展開で2つ以上の指し方を用意している、と、最も重要な終盤の勉強に注力できません。
抜けなく、ダブりなく、戦法を組み合わせるのをおススメします。(補足すると、(2)の相手の同意がないと指せない戦法を選ぶと、必ず別の指し方を用意する必要が出てくる=重複につながる)
(1)~(3)を満たす例をいくつか紹介します。
・なんでも棒銀(相掛かり棒銀、角換わり棒銀、矢倉棒銀、対振り飛車棒銀)
・なんでも中飛車
・(対居飛車の時)ノーマル四間飛車 + (相振飛車の時)向飛車
最後に、(1)~(3)でいくら理屈にあった戦法を選んだとしても、興味が持てなければ身に付きません。攻めが好きな子、一旦受けてカウンターで勝ちたい子、じっくり玉を囲う方が力が出やすい子、激しく戦いたい子、、、様々なので、各々の性格や特徴に合わせて戦法を決めてほしいですね。
ここまで考えて戦法を決めれば、序盤の勉強を簡略化でき、最も重要な終盤の勉強に時間を注げるはずです。次回は、終盤の勉強法について書きたいと思います。