読みの速さと正確さ

「藤井聡太さんの強さは何ですか?」
「読みの速さと正確さです。」

先日、藤井聡太さんとも対局経験のあるプロ棋士とお話する機会があり、ストレートに質問してみたところ、このような回答が返ってきました。

読みの”速さ”と”正確さ”とは何でどのような意味があるのか、私なりに考察したいと思います。


まずは、言葉の定義からです。

読みの”速さ”とは、手を読むスピードのことで、頭の回転の速さ、とも言えます。将棋には、考えることがたくさんあり、持時間が限られているので、読みの”速さ”は重要です。

読みの”正確さ”とは、局面で求められること、局面のイシューに基づいた手を考えることです。求められることは局面毎に変化しますが、中盤であれば「駒の損得と効率」、終盤であれば「速度計算」などの将棋理論に基づくと、局面のイシューを読み取ることが可能です。(将棋理論を一通り学ぶためにおススメなのが、羽生善治九段の名著「上達するヒント」です。)

次に、”速さ”と”正確さ”を合わせて考えると、

一般的に”速さ”と”正確さ”は、トレードオフの関係にあります。読みのスピードを高めれば、読みが雑になり正確さを欠きますし、正確さを追及すると、読みが遅くなります。

重要なのは、目の前の局面で求められることを限られた時間で読み、確からしい一手を指すこと、読みの”速さ”と”正確さ”の両立です。手が速く見えて、速く指す子は才能があるように見えがちですが、読みが速くても、読んでいる中身が雑な人は実はたくさんいます。

最後に、練習方法について。

以前から何度も記載している通り、詰将棋は読みの訓練に最適です。藤井聡太七冠がその最たる例です。

この教室には、毎週詰将棋の宿題があり、読みの”速さ”と”正確さ”を計る指標と捉えることも可能です。正確には、詰将棋は詰む/詰まないで指し手の評価と選択が明確にできるのに対して、実戦は答えが出ない局面がほとんどで指し手の選択が複雑なので読み方が詰将棋と同じではありませんが、詰将棋で培った読みの”速さ”と”正確さ”は将棋を指す上で基礎になります。

また、この教室の4部以上の子は、(小学生にはなかなか難しいですが…)表面的な指し手ではなく、自身の読みを検証、改善していけるとさらに上達できると思います。そのために有効なのは、上手な人が何をどこまで読んで次の一手を決めているのかを知ることです。(高段者以上向けの本ですがおススメなのが、谷川浩司十七世名人の名著「光速の終盤術」です。)


あくまで私の経験を踏まえた結論ですが… 読むことに興味がある子は必ず上手になると思っています。
また、保護者の立場で考えると、このような感じで将棋の技術を因数分解でして整理し理解できると、サポートしやすいと思います。