勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし

将棋を指したことがある方なら言わずもがなですが、将棋はたくさん勝って、たくさん負けるゲームです。どんなに強くてもたくさん負けます。あの羽生善治さんでさえ、プロの通算勝率が約7割。10回やったら3回は負けます。

なので、勝敗との向き合い方がとても大切になります。初心者、初級者のうちは、勝って楽しい、負けて悔しいという思いを抱くだけで十分ですが、上達につれてその姿勢が後の成長に直結すると考えています。

そこで覚えていただきたい言葉が、

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」

です。

これは、江戸時代に大名だった松浦静山の剣術書「剣談」に記されており、最近では、プロ野球の野村克也元監督がよく使われていた言葉です。とても考えさせる言葉なのでいろいろな捉え方があると思いますが、将棋を指してたくさん勝ってたくさん負けてきた経験からこう解釈しています。


勝ちは、自分の好手ではなく、相手の悪手で決まる。負けは相手の好手ではなく、自分の悪手で決まる。つまり、勝敗は自らコントロールできず、局面毎の最善手を追求することしかできない。さらに、勝敗に関わらず、改善すべき要素、負けにつながる要素が必ず存在し、それを見過ごさず対処することが、未来の勝ちを引き寄せる。


この言葉を知って、勝敗にこだわりすぎて自らに過度なプレッシャーをかけるのは止め、いつもフラットな気持ちで対局に臨むことができるようになりました。また、勝ちも負けも同じ一局として同等に扱い、同じように反省、改善をはかることができるようになりました。

有段者以上になると、棋譜取りが上達のための必須事項ですが、勝敗に関わらず記録を残して次につなげてほしいと思っています。

このように、勝負師が遺した言葉は含蓄に富む言葉が多いので各自研究して棋力向上に活かしていただきたいですね。