数が全てを解決する

伸びしろのある有段者シリーズ。前回は、戦法の選び方について、お伝えしました。いくつかの基準を設けて戦法を選べば、序盤の勉強を簡略化でき、勝敗決定に最も深く関わる終盤の勉強に時間を注げること、をご理解いただけたと思います。

今回は、最も重要な終盤の勉強法について書きたいと思います。

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結論からお伝えすると、終盤の勉強は、とにかく数をこなすしかないと考えています。ここで言う”数をこなす”とは、スラスラ解ける問題を出来るだけ増やすという意味です。

終盤は序盤とは違い同じ形になることはほぼ100%ありません。しかし、似たような形になることはたくさんあります。なので、寄せ、受け、詰みのパターンを認識できるようになる(実戦でこの手筋が使えそうだ!と認識できるようになる)まで詰将棋、必至、寄せ、次の一手などの問題をやり込むことが重要です。

ではそのレベルに達するにはどのくらいの問題をこなせばよいかと言うと、詰将棋で言えば、詰将棋ハンドブックの3~7手7冊計1,400問が一つの目安です。この詰将棋ハンドブックシリーズを、3手詰200問=10分(3秒/問)、5手詰200問=15分(4.5秒/問)、7手詰200問=20分(6秒/問)、の時間内にスラスラ解けるようになれば、初段に必要な読みの力、詰手筋を習得できたと言えると思います。このレベルに達すると、教室で出題している詰将棋早解き競争で6点前後(10点満点)を取れるようになります。まずは、そのレベルを目指してほしいですね。

具体的な練習方法は、以前書いた通りです。詰将棋だけでなく、必至、寄せ、次の一手も練習方法は同じです。

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次に問題になるのが、習得した読みの力や手筋の実戦への活かし方です。

瞬間的に解けるようになったので、実戦でも瞬間的に指せるようになる、というのは間違いで、実戦ではその手筋が本当に使えるか否か、読みで丁寧に確認する作業が欠かせません。と言うのも、将棋には似て非なる形がたくさん存在するからです。

 

 

この2つの図がその一例で、21の桂馬が存在する図では、32銀の一手必至です。しかし、21の桂馬が存在しない図では、32銀に87角という受けがあり、以下必至がかかりません。(解説は長くなるので省略します。)

つまり、同じような形でも駒の位置や種類が1つ違えば、手筋が成立しなくなったり、違う手順が正解になったりするのが将棋の面白い点で、実戦では毎局”いつもとちょっと違う状況”が起こっているんですね。なので、数をこなして身に付けた読みの早さや正確さ、手筋を駆使して、目の前の局面で本当に成立するのか、丁寧に確認していかなければいけません。

そのように丁寧に考えた経験は、体の中に蓄積されて、初段になった後の伸びしろに直結していくと確信しています。

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次回は、スラスラ問題を解けるようになった後の取り組み方について書きたいと思います。(初段になるための話ではなく、初段になった後の話の予定です。ご了承ください。)