将棋親が持つべき視点2

前回は、お子様の目標、課題、解決策、効果測定の4点を把握し、そのループを回しながら上達していきましょう、という話をしました。今回はその補足として、その際の注意点について書きたいと思います。

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目標が決まらなければ課題を示せない

まずは、目標設定について。必ず、お子様ご自身、もしくはご家族で相談して目標を決めましょう。その際、現時点の実力は考慮せず、どんな高い目標でも構いません。確からしい考え方を持ち、適切な環境で、すべき努力を淡々と実行すれば、どんな地点でも到達可能だと考えているからです。(この教室を通して、そのような例をいくつも見てそう確信しています。)目標が決まりさえすれば、教える側は、現状と目標のギャップを把握でき、固有の課題を提示することができます。

問題と課題の違い

将棋に限らずどんな分野でも、どれだけ実力が向上しても問題(=より上達するために改善したほうがよいポイント)が複数存在すると考えています。次に、たくさんある問題の中から、課題(解決すべき問題)をいくつかに絞り込みます。全ての問題にアプローチする必要は全くありません。

重要な課題のみにフォーカスする

最後に、絞り込んだいくつかの課題の中から、目標に応じて重要な課題のみにフォーカスして取り組みましょう。取り組む課題は可能な限り1つのみ、多くても2~3つまでです。なぜなら、よほど優秀な人でない限り、人は一度にたくさんの事を処理できないと考えているからです。この課題設定さえ間違っていなければ、一つの課題を解決すれば、他の課題が解決したり、他の問題が消えたりします。

例えば、終盤の寄せの力を最重要課題として取り組んだ結果、合わせて終盤の凌ぎの力の課題が解決したり(寄せの手筋、考え方がわかったので、その防ぎ方=凌ぎ方を自然に理解した)、定跡の知識の問題が消えたり(多少悪くなっても終盤で逆転できるようになったので、手を付ける必要がなくなった)します。

課題と打ち手を混同しない

道場や大会で保護者の方とお話しして、「今の課題は何ですか?」と質問すると、「対局数の不足です。」「詰将棋を解く量が足りません。」と答えが返ってくる時がよくあります。対局や詰将棋は、目標の達成のための課題を解決する打ち手(手段)に過ぎません。もし、課題を正確に把握できれば、その解決策=打ち手が自然に決まるので、課題の把握に努めていただきたいと考えています。

例えば、最終盤で詰みが発見できず逆転負けを喫するケースが多い、という課題があれば、短手数の実戦形の詰将棋をたくさん解くという打ち手になり、詰将棋を解くにしても、目的を持った、より精緻な取り組みになります。

必ず効果測定をする

最後に、目標を達成できたのか、課題を解決できたのか、必ず効果測定をしてほしいと思います。期間は、取り組む量やスピードによって個人差がありますが、通常は2~3か月、長い場合は半年、焦らず長い目で見ていただきたいと考えています。

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お子様の状況を把握する注意点をいくつか書きましたが、これは仕事での頭の使い方と同じ(ビジネスで言えば、問題解決という分野の話)で、仮に将棋の細かな技術がわからなかったとしても、この分野では、教わる側は教える側と同等以上の力がある思います。なので、教える側に勇気を持ってご質問いただき、お子様の状況と今後進むべき方向性の把握に努めていただきたいですね。

以上、2回に分けて将棋親にお持ちいただきたい視点について書きました。上達の一助になれば幸いです。