受けの基本思想

将棋は相手の玉を先に取れば勝ちのゲームで、その目的を達成するために、”攻め”と”受け”の2つの戦い方があります。

“攻め”と”受け”に優劣はないが私の将棋観ですが、こどもにとって”攻め”の方が理解しやすく好きな子が多いため、この教室で取り上げるのは”攻め”の比重がどうしても高くなりがちです。しかし、もちろん”受け”が好きで強みを発揮する子も一定数います。

そこで今回は、受けの基本的な考え方について書きます。
(〇は良い考え方、×は要改善の考え方です。)


〇相手の攻めを急かす
×ただ相手の攻めを待つ
よくありがちなのが、相手が攻めてくるまでずっと待っているという指し方です。それでは相手にプレッシャーがかからず、自由に攻撃陣形を構築され、万全の状態で攻められてしまいます。

相手が攻めてこなければ、逆にこちらから攻める手や相手の攻撃陣形を破壊する手などを見せて、相手の攻めを急かす=相手の攻めに制約を与えて攻めさせるのが良い戦い方です。

最もわかりやすいのが角換わり棒銀の定跡形。

ご存じの通り▲1五歩が定跡の一手ですが、なぜこの局面で▲6八玉と玉を囲わないのか?考えたことがある子は少ないはずです。

▲6八玉には△4四銀が先手の攻めを攻められる前にかわす一手で、2六の銀や1九の香がボケてしまいます。つまり、後手の陣形は、先手の攻めの催促になっているんですね。

〇反撃を含みに受ける
×受け切る
よほど受けが強い子であれば話は別ですが、多くの子にとって棋力が拮抗した勝負で相手の攻めを切らして受け切って勝つのは至難の業です。

であれば、反撃を見据えた受けでなければいけません。つまり、相手の玉をどのように捕まえるのか、常にそのプランを持ちながら受けるのが、良い戦い方です。

この局面は、先日のオンライン解説会で取り上げた横歩取り4五角戦法の終盤戦、▲4九金と龍に当てるのが一般的な受け方ですが、△3九金の好手があって詰んでしまいます。

ここでは先手は角を持てば後手玉に即詰みが生じることを見越して▲3六銀と角に当てて受けるのが良い受け方で難解な将棋です。

〇相手の狙いに対して、異なる狙いで返す or 相手の狙いをつぶす
×相手の狙いをそのまま受け入れる(単に受ける)

初心者や級位者のうちは、相手の攻めに対して素直に応じる、例えば歩をぶつけられたら同歩と取る、ことを覚えてほしいですが、上記の通り相手がそれなりに強くなると、当然狙いを持って攻めてくるので、素直に応じるだけでは攻めが成功してしまう可能性が高いです。

相手の狙いに対して、それと同等以上の価値のある狙いで返したり、相手の狙いをつぶすのが良い戦い方です。

具体例については、オンライン勉強会など機会を見つけてお話ししたいと思います。


“受け”で勝機を見出したい子に少しでも参考になれば幸いです。