棋譜を残す重要性

先週末、西船橋で初めての研究会を行いました。
対局後、時間があれば棋譜を記録してもらう事にしましたが、棋譜取りが初めての方もいらっしゃったので、今回は棋譜を残す重要性とその活かし方について書きたいと思います。

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私が自分の対局の棋譜を記録し始めたのは、高校2年生の4月、師匠に出会ったことがきっかけです。始めて指導を受ける日に「まずは、詰将棋を1万問解きなさい」と言われたのは以前書いた通りですが、実はもう1つ指示がありました。それが「可能な限り(できれば全て)棋譜を残して持ってきなさい」でした。

当時は、ノートPCもスマホもタブレットも何もない時代。大学ノートと鉛筆を常に持ち歩き、週末の大会や道場の帰りの電車の中でその日に指した5~6局を記録に残して、自分なりに課題と解決策を検討し、翌週末に師匠に見せてコメントをもらい自分の考えと比較するという生活を続けました。その時はただ指示された通りに行っただけでしたが、今振り返るとこれは最強の勉強方法だったと断言できます。

なぜなら、ビジネスでもスポーツでも勉強でもあらゆる物事で同じだと思いますが、事実(起こった出来事)をベースに学習する、事実→課題→解決策→学習→事実のループを回すことが上達のために最も効果的だからです。将棋で言えば、自身の対局から課題とその解決策を明らかにして、それを日々の学習に反映し、対局で学んだことを活かして指す。このプロセスが身に付けばあっという間に強くなります。

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上記の通り、棋譜はただ残すのではなく次につなげるためにあるので、ポイントは反省の仕方。ここでは一番心がけている「手だけではなく考え方まで落とし込む」についてご紹介します。

この局面でこの手が悪く代わりにあの手を指すべきだった、とだけ振り返るのは避けましょう。(しかし、こう振り返る人がとても多いです。)理由は、再現性がないから。将棋は広大で、未来に同じ局面を迎える可能性がほぼなく、1つの局面だけ使える手を準備しても次につなげるのが難しいです。

この局面でこの手が悪く代わりにあの手を指すべきだった、に加えて、あの手はなぜいい手なのか、あの手を指すためにはどう考えれば行きつくのか、この手を指した考え方をどう改めればよいのかなど、手の裏に隠れる考え方や自分の思考プロセスまで深く掘り下げましょう。

そうすれば、例えば、終盤で急ぎすぎて攻めが切れるクセがある、だから焦らず着実に攻めることを心がけよう。その時に重要なのは双方の攻めのスピードを把握することで、手数計算を意識して棋譜を並べよう。

のように、1つの局面だけでなく汎用的に使える考え方とそれを踏まえた学習にまで落とし込めるはずです。

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棋譜取りとその反省は、この他、AIをどう使うか(AIとどう向き合うか)、ライバルとの対局を次に当たる時にどう活かすのか、一定数まとまった棋譜をどう分析するか、などいろいろ考えられとても深いテーマです。試行錯誤しながら自分なりのやり方を見つけて棋力向上に役立てていただきたいですね。