「詰将棋派」と「棋譜並べ派」

今回は、先日反響の大きかった将棋の学習法に関するTweetに補足します。

将棋を指す事を上達するためには、まずはたくさん指さないことには始まらない!これには誰しも同意いただけるはずです。

しかし、ただ闇雲にたくさん指しているだけでは、自分一人で考えることができる領域には限界があるので、いつか上達が止まってしまいます。

上達にはたくさん指す事に加えて、良い手順にたくさん触れ、先人が考え抜いて編み出した知識を拝借することが有効です。その学習法が、「詰将棋」と「棋譜並べ」です。(Tweetの繰り返しになりますが、ポイントは、考えてからやる=学んでから指すのではなく、やってから考える=指してから学ぶ、の順であることです。)

詰将棋については、これまでたくさん言及してきたので説明を省略します。棋譜並べとは、英語で言えばディクテーション、分筆で言えば写経のような学習法で、良い手順を体にしみ込ませていくことで将棋の理解を深めます。

実は、詰将棋と棋譜並べの両方が得意で好きという人は稀で、昔から指す将には「詰将棋派」と「棋譜並べ派」の2つの派閥が存在すると認識しています。

こういう私は、羽生七冠ブームで将棋を始めて、初めて読んだ将棋の本が「羽生の頭脳」で、羽生将棋の熱狂的な観る将だった経緯から、圧倒的に「棋譜並べ派」でした。詰将棋については、当初はあまり興味がなく、高校2年生の春に師匠と出会って詰将棋の目的、重要性を教えてもらいようやく取り組み始めたという、お恥ずかしい過去があります。(当然ながら、もっと早く始めておけばよかった…)

お伝えしたいことは、良い手順=筋(筋とは、その手順を指すと、駒が勝手に働きだすスイッチのようなもの)を体で覚えるために、(どちらもゼロには出来ないけれど、興味関心に合わせて)詰将棋か棋譜並べのどちらかには注力してほしい、ということです。将棋を始めて30年弱、素晴らしい将棋を指す方とたくさん出会ってきましたが、詰将棋と棋譜並べのどちらにも取り組まず上手になった例は見たことがありません。

どちらも骨が折れる学習法で、最初はなかなか大変だと思いますが、少しずつでも継続していけば段々と面白さが分かってきます!

日々の学習に、必ずどちらかを取り入れましょう。取り組みの選択に参考になれば幸いです。

※棋譜並べは、読みや形勢判断の基礎スキルから、定跡、手筋、将棋理論の知識まで総合力が求められる学習法で、対象は有段者(人によっては高段者)以上です。級位者は、定跡、手筋、将棋理論のインプットが同じ位置付けの学習法です。

※棋譜並べには、答えがなく万人が理解するのが難しい、かつ、何をもって身に付いたとできるのか判断も難しいと感じているため、この教室では、詰将棋に注力し毎週の宿題にしています。ただし、詰将棋が苦手で、定跡や棋譜の理解は得意という子も世の中には存在します。

※棋譜並べに取り組むのであれば、自身の得意戦法、好きな棋士など最初は興味のある棋譜から始めてみるのが取り組みやすいと思います。また、毎週放映されているNHK杯を観戦するのは、始めやすい方法です。

※現代では「AI派」という派閥が存在すると認識しています。AIの活用はアマ県代表以上の棋力であれば有効で、私が大会に復帰する時は積極的に活用すると思いますが、まだ将棋が完成していないこどものうちから活用するのは時期尚早と考えています。正確には、こどものうちからAIを使って上達できることは証明されておらず、効果がわからない学習法を勧めることは出来ません。効果がゼロとは言いませんが、効果よりも自分の頭で考えることを疎かにするなど副作用の方が大きいと考えています。