学習の広さと深さ

「広く勉強した方が勝てる。狭く一点に絞り込むとバラつきが出る。苦手なジャンルの時に一方的な負け方をしてしまう。」

先日開催されたマイナビ女子オープンチャレンジマッチの中継で、解説を担当された井出先生がこのようなことを仰っていました。(実際の映像は、上の動画の1:27:16~ 2分程度ご確認ください。クリックすると該当シーンから開始されます。)

今回はこの話について、私が思うことを書きます。


冒頭の発言は、角道を止める振り飛車対糸谷流右玉の対局で、糸谷流右玉を相手にする経験が少ない振り飛車が力を出せないまま敗れてしまった事象に対しての言及でした。

初心者~初段程度のうちは、得意戦法を決めてそれに関連する定跡や手筋を学び、たくさん対局することで、特定の領域で知識経験を深めていく、という学習法が有効だと考えています。

しかし、高段者くらいになると、将棋には多様な戦法があり、変化する手がいくらでもある(=定跡には無いけれど、一局の指し方がたくさんある)ので、あまり経験がない戦法や指し方を相手にすることが増えてきます。

穴を埋める
そのような自分が知らない戦法や指し方を目の当たりにした時に、自分なりに対策を考えてみたり、自身で調べてみたりして、必ず穴を埋める努力をしましょう。そのままにするとわからないことがどんどん増えていきます。こどもの将棋には、どんなに強い子でも無数に穴がありますが、少しずつ埋めていけば、相手がどんな形で来ても自分の力を出し切れる状態に近づいていきます。

関係のない分野を学んでみる
別の観点では、自身の将棋に関係のない定跡、手筋、棋譜を学んでみるのも有効だと考えています。

将棋の強さとは、未知の局面でその盤面で求められていることを読み取りそれなりの手を指すこと、だと言えますが、そのためには幅広い知識や経験が必要です。自身の得意戦法のみ狭く深く学んでいく学習法で十分だとは思えません。

例えば、振り飛車党の子が、居飛車の棒銀や横歩取りのような戦法やそれに関連する手筋、実戦例を学ぶことは有効だと考えます。

しかし、現代はインターネットや特定領域にフォーカスした書籍、AIなどの影響で、どうしても知識が狭く深くなりがちです。私のおススメはNHK杯で、毎週対局者が変わり、幅広い戦法や指し方に触れることが可能です。


目の前の勝つことに最適化しすぎず、興味関心を少しずつ広げていきましょう!それが、将来の勝ちにつながります。

が井出先生の伝えたいことだと思います。

さらに、そのような営みはとても楽しいと思います。