昨日、「第92期 ヒューリック杯棋聖戦 五番勝負」が終了しました。そこで、棋聖戦で印象に残った事から、藤井聡太さんの凄さを書きたいと思います。
【ご参考】
私が考える藤井聡太さんの凄さ 1
3. トレンドを創る
将棋の歴史を紐解くと、時の第一人者がその時代の指し方、考え方のトレンドを創ってきました。
例えば、羽生善治九段であれば、
・一つの戦法に特化するのではなく、様々な戦法をすることが将棋の理解、棋力向上につながる
・将棋は数学的なゲームで必ず解が存在し、追求する(それまでの将棋は、人間的な勝負事の要素が強かった)
が挙げられます。
では、これから第一人者になるであろう(現時点では4強と言われているのでこのような書き方にしています)藤井聡太さんが、現在進行形でどのようなトレンドを創っているのか。その一つが、
・受けは最低限に、可能な限り攻め合う
と考えています。つまり、玉の囲いにかける手数を最小限にして攻めを中心に組み立てたり、中終盤で攻めと受けの両方が成立する局面で攻めを選択したりするんですね。
第1局(棋譜)
58手目、60手目の局面、後手は飛車取りを受ける一手に見えますが、強く攻め合いを選択しました。飛車取りは、「飛車を取る」「飛車を打つ」の二手かけて初めて意味をなすので、この二手をより強い攻めに回そうという考え方です。また、△8二歩と飛車取りを受ける手のように、自分の駒の働きが弱まる手は出来る限り指さないと解釈することもできます。
第3局(棋譜)
66手目、68手目の局面、棋譜コメントにもある通り、1回受けてから攻めるという指し方が普通(これまで多くの人が選択してきた)の指し方だと思いますが、貴重な持ち駒の銀を受けに使うと半面攻めが手薄になるのでここも受けずに攻め合いました。
このような指し方は、他の棋士にも見られます。
第6期叡王戦本戦 永瀬拓矢王座 対 藤井聡太二冠 2021/05/31(将棋連盟モバイル参照)
73手目の局面、以前の永瀬王座であれば、▲9六歩や▲8八玉など受けに手をかけたはずです。しかし、73、75手目の選択は攻め合いでした。この相手には受けて後手を引いては勝てないと言わんばかりです。
この攻め合いの指し方は危険と隣り合わせで、極めて正確な速度計算が求められます。プロの将棋がアマには到底真似できないこんなせわしい将棋ばかりになってしまうのか、今後の展開に注目しています。
(棋聖戦、叡王戦の棋譜利用ガイドラインがわかりませんでした。もしこの書き方がガイドラインに抵触するのであれば、この記事を修正または削除します。)