私が考える藤井聡太さんの凄さ 1

本日夜にYouTubeに投稿されたひろゆきさんのコメントが話題になっています。これは将棋の世界の永遠の課題で、将棋自体に興味を持つ人が増えるか否かに直結すると考えています。

(念のために書きますが、この動画のタイトルのように、日本将棋連盟の失態とは全く思っていません。娯楽が溢れる現代において、将棋を知らない方に将棋に触れてもらうために、将棋自体の面白さの外部へのアピールの重要性が増しているという認識です。)

そこで今回は、私が考える藤井聡太さんの凄さを書きたいと思います。


1.筋

将棋には、「筋」という概念があります。「筋」とは、ある手を指すと全ての駒が勝手に働くボタン、つまり野球のバットの芯(スイートスポット)のようなもので、そんな手を多く指せる人を筋が良いと言います。

ここで重要なのは、トッププロになるような人の筋の良さは、ごく年少期から現れるという事です。

少し踏み込んで書くと、筋の良いという言葉の中にも、バットの真芯にドンピシャで当てているか、ほんの少しだけど芯からずれているか、実は芯にかすっているだけなのか、さまざまであり、この違いは伸びしろに大きく関係すると考えています。

2017年の冬、この教室をスタートする前に、将棋年鑑に掲載されている過去15年分ほどの小学生名人戦、倉敷王将戦の棋譜を全て並べました。その中に、あらゆる球を真芯で打ち返すぶっ飛んだ子がいました。それが、小学3年生の藤井聡太さんでした。

約40年前の小学生名人戦決勝戦、小学6年生の羽生善治さんの棋譜からも、同様の事象が読み取れます。

2.後の先

世の中であまり語られていない話ですが、将棋の世界には時代の覇者になれる「型」が存在します。それが「後の先」です。

「後の先」とは武術の言葉で、古くは双葉山、現代は白鵬が好んで使い、(極めて高度な技術なので一言では言い表せませんが)あえて一言で言えば相手の力を使って技をかける、という事です。「後の先」の対義語は「先の先」で、自分の力に頼って技をかける事を意味します。

そして、将棋界の覇者の系譜、木村義雄-大山康晴-中原誠-羽生善治、これら時代を作った棋士の型は「後の先」で、ライバルの「先の先」の将棋を打ち負かしてきたという歴史があります。つまり、「後の先」の将棋であれば、時代の覇者になれることが確定するんですね。

2017年の冬に倉敷王将戦低学年の部の決勝戦の棋譜を並べる約1年前、藤井聡太さんは中学3年生でプロデビューしました。

10局ほど観てわかったのは、全く指し手に無理がない「後の先」の型の将棋であることでした。将棋を始めて四半世紀、その間デビュー直後の棋士の棋譜でこのような感覚を持ったのは初めての経験でした。


書きたい事は山ほどあるので、おそらくシリーズ化します(笑) 次回をお楽しみに!