誰にでもある悩み

教室を運営していると、将棋に関する様々な相談を受けます。

将棋の勉強方法、棋力の伸び悩み、取り組む戦法の選び方、大会に向けた準備の仕方、現在の課題の把握、、、など、挙げればキリがありません。さらに、棋力が上がれば上がるほど、親子の悩みが深くなっていくという傾向があるとも感じています。

そこで今回は、将棋に取り組む中で私が悩んだ経験とその経験から学んだことについて書きたいと思います。


1つ目は、将棋を始めた中学生の時の環境です。私の実家は岐阜県多治見市にありますが、近くに将棋の道場がなく土日に街に出てしか対局できない上に、相談できる相手はいませんでした。当時はインターネットは存在せず、オンライン対局もありません。そこで、平日は「羽生の頭脳」などの定跡書や羽生先生(当時七冠王!)の棋譜を覚えて、土日に道場で覚えたことを試すという取り組みを繰り返しました。(詰将棋を解く重要性すら知りませんでした(笑))

その時は、都会には毎日対局できる環境があることをもちろん知らず、あまり恵まれない環境に身を置いているという認識はなく、悩みはありませんでしたが、もし今親の立場で同じような環境だったら、子供にどのように取り組ませるべきか苦慮すると思います。

今振り返れば、この経験は決してマイナスではなく、たとえ環境に少々恵まれなくても、努力次第、取り組み方の工夫次第で何とでもなる、ことを学べたと思っています。

2つ目は、初めて全国大会に出場した後のことです。高校1年生の時、幸運にも高校選手権と高校竜王戦で県代表になり、全国大会に出場しました。当然、レベルが違いすぎ、勝負になりませんでしたが、日本一になりたいという思いを持ち帰ることができました。しかし、将棋の本をどれだけ読んでも、自分の頭でどれだけ考えても、それを実現する方法がわかりませんでした。

それから半年ほど悶々とした時間が続いた時、偶然出会ったのが師匠でした。師匠には、将棋の技術から、勝つための考え方、心の持ち方まで、あらゆることを教えていただきました。この幸運は感謝してもしきれません。

この経験から、自分自身で考え抜くことは重要だけど、それでも解決しない時は人に聞くという手段がある、ことを学びました。

3つ目は、大学2~3年で全く結果を残せなかった時のことです。高校1年生の3月に師匠に出会ってから、高校選手権(高2)、高校竜王戦(高3)、学生名人戦(大1)、オール学生選手権(大1)と続けて優勝でき、大学2年の春にプロの公式戦に初めて出場し2勝することもできました。しかし、それから2年間、大学生の大会で負けが続き、全国大会にすら出場できなくなりました。

当時はなぜ結果が出なくなったのかわかりませんでしたが、今振り返れば、勝っていた時に自信だと思っていた精神状態は実はただの慢心で、その時に手を付けるべき課題を放置していたのが原因だったと思っています。

この経験から、どんな状況でも淡々と努力して改善し続ける重要性や、結果が出ないのは課題を明確にし実はありがたい状況であること(結果が出ている状況では課題を抽出することもそれに取り組むことも本当に難しい)、を学びました。


将棋に限らず、何かに一生懸命取り組めば、棋力に関わらず悩みは必ずあるもの。その悩みと上手く付き合い、場合によっては楽しむくらいの気持ちで取り組むと新しい何かが見えてくると思います。強い心を持って、頑張ってほしいと思います!