スモールステップを積み重ねる

小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行くただ一つの道

尊敬するイチロー選手が、2004年にMLBのシーズン最多安打記録を塗り替えた時に残したコメントです。(今のこどもにとって野球選手と言えば大谷翔平選手で、イチロー選手のことは知らない子が多いかもしれません。棋士で言えば、大谷選手=藤井聡太八冠、イチロー選手=羽生善治永世七冠のような存在と言えば、凄さが少し伝わるかもしれません。)

この言葉には、

-どんなに大きな目標や困難なタスクであっても、容易なスモールステップに分解できる
-スモールステップを踏まなければ、次の大きなステップに移ることはできない
-スモールステップを丁寧に積み重ねるのは、遅いようで一番速く、一番遠くまでたどり着く

という意味が含まれていると考えています。

しかし、現実は…

-スモールステップの切り刻み方が不十分で難解なラージステップになっている
-スモールステップが出来ていない、または、精度が低いうちに、次のステップに移ってしまう(100点満点にするのは逆に時間がかかるのでその必要はありません)
-難解なラージステップをできることが優れていること、競争相手よりも先んじていること、だという風潮がある

で、ほとんどの子が個々の能力よりも前のレベルで止まってしまうという事象が発生していると考えています。

今月、棋譜取りについて、ある保護者の方とやり取りする機会がありました。完璧な棋譜を残せるようになるのは、将棋倶楽部24のレーティング2,100点くらい=研修会C2くらいからでとても難しいことです。(この教室の受講生の棋譜を確認する限り、そのレベルでも完璧な棋譜を残している子はほとんどいないので、実際はもっと高い棋力に加えて年齢による頭の成長を求められるかもしれません。)

棋譜を残せるようになる、という目標に対して、ステップを分解していくと…
(この教室では、将棋会館初段以上=3部以上から棋譜取りを勧めています)

1. 棋譜を残す必要性、メリットを理解する

2. オンラインで対局した後、棋譜を残してログと付け合わせ、差分を抽出する(まずは1日1局、そうすると、あまりの違いに親子で愕然として心が折れそうになるのは間違いないですが、まずは現実を認識するしかありません)

3. 差分から明らかになった事象を整理する(棋譜が途中まで、こども自身が勝手に棋譜を創作=全く異なる棋譜になっている、手順前後、手順の抜け、など)

4. 事象の原因を分析する(「棋譜が途中まで」「こども自身が棋譜を創作」は棋譜を全く覚えていない、「手順前後」「手順の抜け」は、棋譜を大まかに覚えているが一手一手の意味を持って指していない、その原因は、定跡や手筋の理解不足、読みや意味付けが雑、など)

5. 棋譜取りと合わせて、原因を解決する学習を行う(定跡や手筋を理解する、丁寧に読んで指す、など)

6. 2~4を繰り返して、棋譜の精度を上げる(回数は個人差有 …と言っても、完璧な棋譜には上記の通り高い棋力を求められるので、100点満点の棋譜にはほぼなりませんが、自身の振り返りや先生に添削に耐えうるレベルの棋譜にはなります)

7. 大会、道場などリアルの対局でも棋譜を残してみる

8. 2~7を繰り返す中で棋力や将棋への理解が高まるにつれて、棋譜の精度が少しずつ向上する  

9. 完璧な棋譜を残せるようになる

さらに、

どのくらいの頻度で行うのか、
詰将棋を解くこと、対局すること、定跡書を読むこと、などとどのように時間配分するのか、
繰り返し行う中で、初回と2回目以降でどのような違いを出していくのか

によって、さらに細かなスモールステップに分解できるはずです。

こうしていくと、1つずつのステップやタスクはそれほど難しくなく、取り組むのが容易で、身につく可能性が高まるのは間違いありません。

スモールステップを積み重ねることは、詰将棋の解図力を高めること、定跡や手筋の理解を深めること、など全てに当てはまります。

日々の努力が成果につながるよう願っています。

参考記事