興味を拡げる

私が思う将棋の面白さ、かつ、難しさは、局面によって求められるテーマが変化することです。

形勢判断の4要素に”駒の損得””駒の効率””玉の安全度””手番”があります。(こどもの将棋では、駒を簡単に損しない=無条件で取られない、ことが最注力ポイントという認識ですが、高段者くらいになると…) 時に”駒の損得”の価値が高いもあれば、時に”玉の安全度”が勝敗決定を決める局面もあり、局面によって重要度が変化します。

また、攻め/受け、玉の固さ/広さ、急戦/持久戦など、さまざまな指し方のテイストがあり、局面によって良い指し方が変わります。

形勢の良し悪しでも指し方が変わります。優勢な時は、自分自身の最善手を積み重ねるのが良い指し方ですが、劣勢な時は相手に悪手を指してもらう=紛れを求める指し方に変化します。

つまり、万能な指し方は存在せず、目の前の局面に適した指し方を追求するしかないんですね。

この教室を通してたくさんの子と接してきて感じるのは、人間誰しも思考の癖や好き嫌いがあり、それが得意な戦法や指し方=棋風に現れますが、有段者から高段者、または、高段者以上を目指すにあたり、その戦法や指し方に固執するのか、それとも、その戦法や指し方を軸として新たな戦法や指し方を柔軟に取り入れるか、によって成長の度合いが大きく異なるということです。

出来れば後者であってほしく、そのためにお勧めしたいのが、自身に情報の取捨選択の権利がない網羅的なコンテンツに触れ、将棋への興味を拡げていくことです。現代はたくさんの良質なコンテンツがありますが、その中でも「将棋世界」「将棋フォーカス」「NHK杯」は学習題材として特に優れていると考えています。「将棋世界」であれば、戦術特集で自身の得意戦法以外の指し方のポイントを知る機会にもなりますし、現在連載中の終盤講座はとても勉強になります。「将棋フォーカス」であれば、豊島九段の講座はマニアック(笑)で参考になります。「NHK杯」であれば、毎週対局者が変わりそれにより戦法、指し方も変わります、さらに時間の使い方を学ぶのにも有効です。

自身に関係する戦法や指し方を深く掘り下げていけば道は開ける、という考え方も一理あるとは思いますが、それが狭すぎると息詰まる可能性が高いです。上達すればするほど幅広い戦法や指し方が求められ、将棋全体の理解度が問われます。将棋全体の理解度に直結するのが、将棋への興味の広さ、深さです。

日々将棋に取り組む中で、少しずつ興味を拡げていけるよう願っています。