どんな状況でも勝ち切ってこそ真の実力

「切れ負けで、優勢な将棋だったものの相手の王手ラッシュで時間が切れて負けてしまった。将棋の内容とは全く関係のない要素での負けをどのように受け止めたらよいですか?逆の立場だったら同じことをしますか?」

先日、このような質問を受けました。

-時間の都合で急に持時間が変更される
-運営が自身に納得できない裁定を下す
-着手の有無などで相手ともめる
-相手が延々千日手を目指して抽選による勝敗の決定を狙ってくる
-相手が極端な早指しや大きな駒音で煽ってくる

切れ負け以外にも、大会で将棋とは関係ない要素で勝敗が決まったり、自身に不都合なことが起こったりすることはよくあることです。

そのような時に、将棋以外の要素だから仕方がない、自分の実力を出し切っていい将棋を指せたから良しとする、とする考え方もあります。

しかし、何かの結果を残したい、より強い相手と対局したい、という気持ちがあるのであれば、勝敗が環境に左右されるようでは、自身の望む状態は手に入らない可能性が極めて高いです。倉敷王将戦や中学選抜の重要な一局で、××だったから負けた、という言い訳は出せないはずです。どんな状況でも勝ち切ってこそ真の実力、です。

そのためには、事前に起こりうることをできる限り想定しておくこと、さらに、どれだけ想定したとしても想定外なこと、不都合なことは起こりうることを理解すること、がポイントだと思います。その上で、どんな状況でも動じない強い心が求められます。

これは将棋に限らず、勉強やスポーツ、さらには大人になってからの社会でも同じことが言えると考えています。受験で苦手な分野が出題された時の対処、社会の理不尽さの中で結果を残すこと、など将棋の経験が活かせるはずです。

話を戻して、冒頭の質問に回答すると、

・将棋の内容自体は問題なかった。
・ただし、勝負術についての想定が足りなかった。相手の時間を切らす戦術までは考えていなかった。次回からは、それを含めた時間配分を心がける。
・時間を切らすような勝ち方は好きではないので、将棋の盤上や持時間の使い方の技術を高めて内容で勝てる方向を目指したい。
・もし自分が同じ状況(例えば、切れ負けで自分が敗勢で残り3分、相手が残り1分)に追い込まれた時、(指導者としてこどもにそのような勝負の仕方を勧めない、かつ、本当はやりたくないですが…)最終手段で時間を切らす戦術を使う可能性はる。ただし、そのような勝負の仕方、勝ち方ではこの先強くなれるとは言えない、かつ、勝負事で最も重要な相手からの信頼を得られない、ため、猛省してより一層の技術の向上に励む。

私だったらこのように整理して、次の大会に臨みます。

この話には正解はなく、夏休みにこのようなことを親子で話し合うのも価値があると思います。