形勢判断していますか?

①「勢いよく攻めれば勝てるから、駒の損得はあまり気にしていない。」

②「AIが51手目は▲3五歩だと言っていた。」

③「50手目の△2一銀では△2三銀の方が良かった。54手目の△3五角では△7五飛とすべきだった。68手目の△4八金は急ぎすぎ、△3二金と受けるべきだった。」

これは、オンライン勉強会やオンライン対局、リアル教室を通しての“有段者”の受講生親子との最近のやり取りです。まず3つの事象を整理すると…

①中終盤の腕力が強く、勢いよく駒をぶつけてバンバン攻めれば勝てると思っている。駒の損得など細かいことは気にしない。
②自分の頭を使って代替手の検討や形勢の把握をせずに、AIの評価値、候補手に頼っている。
③重箱の隅をつつく振り返り方をしている。

これらが意味することは、想像以上にこどもは形勢判断をせず(もしくは、出来ず)一局のポイントを整理できない、が考えられます。そして、形勢判断をしなければ(出来なければ)、意味のある振り返りは到底出来ません。

2月のオンライン勉強会で有段者にお話しした通り…

将棋は形勢を損ねると自分がいい手を指し続けたとしても相手に同じくらいのいい手を指し続けられれば、その形勢の差は縮まらず負けてしまいます。厳密には形勢が不利な局面で最善手は存在しません。

つまり、意味のある振り返り方とは、一局全体の形勢の流れ(浮き沈み)を把握し、形勢を損ねた局面(=自身が悪手を指した局面)の周辺をピンポイントで振り返り、形勢の均衡を保つ手を検討すること、です。
(この振り返り方が出来るようになった後に、不利な局面での粘り方、優勢な局面の勝ち方など、別の視点で振り返ることは有効です。)

しかし、この教室を通じた経験上、有段者であってもこどもが一局全体の形勢の流れ(浮き沈み)を自身の力で把握するのは限りなく難しいことです。

この解決策をこの2~3日検討した結果、まずは以下の思考法を身に付けるのが良いのではないかという結論に至りました。

1局を通した
(1)駒の損得の推移を把握する
(2)兵力差(損得と効率)の推移を把握する

対局後に、試しにお子様に上記の視点で質問してみてほしいです。有段者であっても、おそらく(1)の駒の損得の推移でさえも把握できていない子がほとんどです…

そして、この2点をそのまま3月のオンライン勉強会の有段者向けテーマにしたいと思います!

※全体像の把握は、級位者には難しすぎるので不要です。まずは定跡や手筋を覚える、局所的な局面の駒の損得を計算できるなど将棋の基本的な技術、考え方を身に付けましょう。