「この局面、後手は何を狙っていくのがいいかな?」
「狙いのある手を指そうね。」
毎週末のオンライン勉強会で、よくこのような質問や話をします。将棋の解説や本でこの”狙い”という言葉を聞いたり見たりする機会は多いと思いますが、その定義を目にすることはほとんどなく、意味をわかっているようで自分では説明できない子が多いと思っています。そこで、今回は”狙い”について書きます。
“狙い”とは、駒得する、駒を成る、敵の守りの駒をはがすなど、自分が何かの得をする実現したい未来の事です。
この局面は、最近のオンライン勉強会で取り上げた角換わり相早繰銀の定跡です。
ここから、先手は3五歩 同歩 同銀と仕掛けます。この局面の双方の”狙い”について考えてみましょう。
まずは、先攻した先手の”狙い”です。
ここで、もし後手が3四歩と平凡に守ってきたら、2四歩 同歩 同銀 同銀 同飛 2三歩 2八飛と進みます。
・攻めの銀と守りの銀を交換した。(攻めの銀を盤上のどこにでも自由に使えるようになった。相手の守りを薄くした。)
・攻めの歩2つを持ち駒にした。(歩を盤上のどこにでも自由に使えるようになった。後手は歩を手持ちにしていない。)
つまり、「攻め駒を捌いて持ち駒にする」という先手の”狙い”が実現した局面と言えます。
では、戻って3五歩 同歩 同銀と仕掛けた局面で後手はどう指せばよいでしょうか? 一つは5四角(オンライン勉強会で何人かの子が指摘した手)が考えられます。
この手は、もし相手が2四歩 同歩 同銀 と攻めてきたら、2七歩の返し技を狙っています。しかし、もし相手から仕掛けてこなければ(例えば、2六飛と2七歩を打たれないように待たれたら)、具体的な得を求めるのが難しい手です。
つまり5四角は、先手が攻めてきたらカウンターという後手の”狙い”が実現するけれど、相手が待ったら後手の”狙い”があまりない、という手なんですね。
3五歩 同歩 同銀と仕掛けた局面では、8六歩と反撃する手が良い手です。
8六歩の次の狙いはもちろん8七歩成、同銀であれば5五角の飛香両取りです。
8六歩に同歩であれば8五歩の継歩があり同歩と取ると同飛が十字飛車(銀桂の両取り)、放っておけば8六歩の大きな取り込みを狙っています。
つまり8六歩からの一連の手順は、相手が放置しても、相手が応じても後手は何か得をする=”狙い”がある、という手なんですね。
子供の時は、8六歩のような、相手がどう指してきても自分の”狙い”がある手で、どんどん自分の得を求めていってほしいと考えています。(5四角のように、自分からの”狙い”があまりなく相手に委ねる手は、極めて高度な技術として存在しますが、それは先の先の話なので、子供の時は候補から外して良いと考えています。)
さらに8六歩以下の一連の手順は、相手が3五歩 同歩 同銀と仕掛けてきたからこそ生じた手です。8六歩 同銀に5五角の両取りは4六にいた銀が3五に動いたからこそ生じた手ですし、8六歩 同歩 8五歩の継歩は3筋で歩を得たから生じた手、そして、8五歩 同歩 同飛の十字飛車は4六にいた銀が3五に動いたからこそ生じた手です。
このように、相手の動きに合わせた手で返せると、均衡のとれた面白い局面が目の前に現れ、将棋を指すのがますます楽しくなると思います。
まとめると、
1.”狙い”とは、自分が何かの得をする実現したい未来のこと。
2.相手がどう応じてきても自分の”狙い”がある手を指しましょう。
3.相手の動きに合わせた自分の”狙い”を創りましょう。
これらを理解できて指せるようになれれば、棋力が大きく向上するだけでなく、将棋をやめられなくなると確信しています!