「三間飛車に対する右四間飛車が上手くいかないから、穴熊に変えました。」
教室を運営していると、これまでやっていた戦法が機能しないので別の戦法にチャレンジしてみる、という話をよく聞きます。
この話は、上達する上で重要な論点が内在しているので、私の考えを書きたいと思います。
原因を究明、理解する
まずは、これまでの戦法が上手くいかない原因を究明し、理解しましょう。
将棋の戦法には、優劣はないので(AIによる評価値の差はありますが、人間にとっては誤差の範囲) 戦法が悪いということは絶対にありません。
定跡を誤って認識して駒組み、仕掛け方が間違っている序盤力の問題なのか、互角以上の分かれを得ても勝ち切れない中終盤力の問題なのか、自分の指したい将棋と戦法の特性が合っていない棋風と戦法の相性の問題なのか、など、さまざまな理由が考えられ、自分で考えるなり、先生などの大人に聞くなりして原因を明らかにしてほしいと思っています。
自分が指したい将棋を追求する
代わりにチャレンジする戦法が、本当に自分が指したい将棋なのか、を必ず確認しましょう。
攻めて勝ちたい子が受け身になる戦法、急戦で戦いたい子が持久戦のじっくりした戦法、など、棋風と戦法の特性が合致しないことは避けるべきです。
よく起こりがちなのが、これまでやっていた戦法が自分の棋風に合っていて本当はやりたい戦法なのだけど、何らかの理由で上手くいかず、以前の戦法と比べて自分の棋風に合わない他の戦法に逃げてしまう、というケースです。そのようなやり方では、たとえ瞬間的に機能したとしても、遅かれ早かれ上手くいかなくなる可能性が高いです。
冒頭の例だと、右四間飛車を指す子は急戦でバンバン攻めるのが得意だと考えられますが、穴熊は囲うまでに手数がかかるので攻めに手が回らず、右四間飛車ほど積極的に攻めることが出来ない可能性が高いです。(将棋は、戦力や手数が限られているので、1つの要素を重んじるとそれと相反する別の要素が疎かになると考えるのが自然です。冒頭の例では、守り、持久戦を重視する代わりに、攻め、急戦を放棄しています。)
繰り返しになりますが、自分の指したい将棋を明確にして、それに合った戦法を選んでほしいと思っています。
※自分から積極的に攻める居飛車党が、反撃する振り飛車にチャレンジするように、自分の得意戦法を身に付けた後で、幅を広げるために別の戦法に挑戦するのはとてもいいことです。ただし、まずは相手がどんな形で来ても、自分が準備した形になるよう得意戦法を固めましょう。
小学生でここまで考えて戦法を選択する子は少ないと思いますが、上達する上でとても重要なポイントなので気を付けてほしいですね。
参考記事