「今までは、先手でも後手でも角換わりを目指していました。しかし、自分が先手で相手が横歩取りを目指してきた時、角換わりを目指すには自分から一手損を甘受して角を交換するしかなく、先手番を放棄して後手番になっていました。それはとても損な事だと思い、横歩取りを勉強し始めました。」
最近、対局した子からこのような話を聞きました。自分で自分の将棋の改善点に気付くのは高度な思考で、大変感心しました。この気付きを踏まえて、私の考えを書きたいと思います。
物事は、課題を解決したらまた新たな課題が必ず現れる、いつでも課題は1つではなく無数に存在する。
これは将棋だけでなくあらゆる事に当てはまる不変の真理だと思っています。将棋で言えば、棋力が高まれば高まるほど難しい課題がたくさん目の前に現れ、それらを解決する楽しさ、苦しさを与えてくれます。
それを踏まえて、将棋の先生として、教える際に大切にしていることの一つに、
勇気を持って、最も重要な課題1つに絞って伝える。その他の課題は、あえて言わない。
があります。
他人から言われて学ぶのは、自分で気づいて学ぶよりも力が弱いですし、先生があまりサポートし過ぎると、こどもが必ず持っている気付きを削いでしまう、と考えているからです。
冒頭の言葉は、あえて言わず状況を見守っていた課題で、自発的な気付きであり、このような状態になれば上達が加速するのは間違いありません。事実、その子の棋力は最近大幅に向上したと認識しています。
このような気付きは、最初は間違っているケースも多いと思いますが、それも上達には必要な事です。(与え過ぎで)最短距離で行くより、(ある程度こどもに任せて)遠回りした方が実は早かったというのはよくある話です。気付きからどんどん行動に移してチャレンジしてほしいですし、保護者にはそのサポートをしていただきたいと思っています。
学ぶとは何か? 教えるとは何か?
を改めて考えさせられる嬉しい出来事でした。