今週は、序中盤の対応方法について考えた週でした。低学年や初段前後までは、限られた戦法の指し方を覚えればそれなりに対応できますが、高学年以上や高段者、将棋倶楽部24の2,000点以上になると相手の指し方が多様化してきます。
例えば、居飛車党の子でゴキゲン中飛車に対して超速3七銀戦法を愛用している子は多く、こども同士の対局では8~9割の確率で銀対抗という形になります。しかし実際は、振り飛車側に以下のような多様な指し方が存在します。振り飛車側に他にも変化する指し方があり、厳密にはさらに多いです。(図面は割愛します。興味がある子は定跡書で学んでみてください。)
①銀対抗
②3二金型から5六歩
③3二銀型から5六歩
④3二金型+美濃囲い
⑤3二銀型+美濃囲い
⑥5四銀型
⑦菅井流
そうなると、①の銀対抗の対策は万全なものの、②以降の指し方をされた途端に対応に苦慮するという事象が発生しがちです。この事象は、居飛車党の対ゴキゲン中飛車に限らずあらゆる戦法で起こります。
多様な指し方への対応が、そのレベルよりも棋力を高められるか、止まってしまうのかのポイントの1つだと考えています。
対応方法について3点挙げておきます。
〇1対1対応
定跡に興味がある子は、出現可能性が低い形も一通り理解しておきましょう。ただし、それは多くの子には難しいと思っています。自身の実戦で現れた時に、手元にある定跡書を辞書代わりとして活用し、1つずつ理解していくのが現実解だと思われます。
〇グルーピング
相手の新たな指し方に対する自分の指し方、というように1対1対応で学んでいったとしても、ほとんど現れない形なので忘れがちなのと、見たことのない指し方が次々に現れるため、対応が難しい可能性が高いです。
その時に必要なのが、定跡を局面の性質で押さえる抽象度の高い思考です。相手にこう指されたらこう指す、だけでなく、相手のこのような形は弱点の角頭を攻める、その攻め方は主に2つある、のように、1対1対応を学んだ時に、合わせてその局面の性質を自身で考えておきます。そうすると、未知の局面が現れた時にも、その局面を性質で捉えれば似た局面での指し方を応用でき、最善手ではないかもしれないけれど自分から崩れないそれなりの対応をすることが可能です。
抽象度の高い思考を理解、実践できるようになるのは高学年から、が教育業界の常識だと認識しています。この教室を通しての私の経験では、そのタイミングは個人差があります。早い子で4年生から、遅い子で6年生~中学1年生という感じでしょうか。
〇地力
どれだけ準備したとしても、1人で考えられることには限界があり、必ず想定していない指し方に遭遇します。そのような時にも、自分から崩れないそれなりの対応を出来るようになるために、対応できなかったとしても終盤力で何とかできるように、地力をつけておくしかありません。
多様な指し方への対応はとても難しいですが、頑張って食らいついてほしいと思っています。