意識の力

「流されないように弾こうね。」

4月にピアノの発表会を控え、先日のレッスン中に課題曲を弾いていた息子(小3)と娘(小2)に先生からこのようなアドバイスがありました。

“流されないように”とは、無意識に反射的に指を動かす(片手での練習を反復するとそうなりがち)のではなく、一音一音意識して音、リズム、スピードを自分自身でコントロールしよう、という意味のようです。

その話を聞いた時、ピアノだけでなく様々な物事の上達に関係する話だと感じました。

例えば、息子と娘が通っている小学校の毎日の宿題に”音読”があります。

教科書に書いてある文を声に出して読む、という宿題で、同じ話を何度も読んでいると話を覚えて、無意識に(流されて)読めてしまいます。しかし、それでは学習効果があまり高まらないと思われます。

文を意味で捉えて文節で区切って読んだり、本文と会話で抑揚や読み方を変えてみたり、読みながらその物語の情景を頭の中で描いてみたり(頭の中で動画化したり)、、、繰り返し読む中でそのような工夫が出来ると、徐々に理解が深まるはずです。

この話は、もちろん将棋にも当てはまります。

序盤戦で得意戦法の定跡を覚えれば、何も考えなくてもプロ棋士と全く同じように指せてしまいます。(ピアノや音読は、手の使い方や声の出し方でアウトプットが変わりますが、将棋は、手つきが指し手の良し悪しに影響しないため余計にそうなりやすい。)

ただし、同じ一手を指すにしても、無意識に流されて指した子と、ノータイムで指せるのにあえてその指し手の意味を考えて指した子、定跡を知った上で他の手も候補に入れて比較して指した子では、対局数を重ねれば重ねるほど差が開いていくのは明白です。

これは終盤戦でも同じで、教科書に出てくるような次の一手があるような局面で、反射的に手筋の手を指した子と、読みでその手が良い手であるのを確認した子と、その手でも十分な効果が上がると分かった上であえて他の手も検討した子では、同じ一手を指したとしてもその後の成長が大きく異なるでしょう。

最初は、ここに書いたように深く意識して考えることは難しいと思います。特に、低学年のうちは論理的な思考力が十分に身に付いておらず、反射的に良い一手を指せる能力も重要という認識です。ですが、一手一手を流されずに意識して指せるようになると、その後の振り返りも容易にでき、成長が加速するのは間違いありません。

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それらしい事を書いているうちに、私も10代の時、無意識で流されて読みを入れずに指した手でたくさん痛い目に逢い、涙を流した苦い記憶が蘇ってきました(笑) そういう意味では、自分の甘さを盤上で指摘してくれる自分と同等もしくは少し強い相手とたくさん指すのは最も良い学習法だと思います。

自分自身で一手一手をコントロールするという意識で、今日も将棋をたくさん指しましょう!