12~1月の2か月間、息子(小6)の中学受験の関係でリアル(リアル教室、研究会)の開催を控え、代わりに棋譜解析を実施しています。
世の中には、指導対局、動画、書籍などさまざまなサービスがありますが、自身の棋譜が最良の先生だと考えています。他にはない固有の課題をクリアに抽出できるからで、しかも自分自身で振り返ればコストはゼロです。
そこで今回は、私が棋譜を確認する時のポイント=自分の頭で振り返るノウハウについて書きます。
1. 全体の流れをつかむ
最初から、この局面でこう指せばよかった、のような細部には入らず、全体の流れをつかみます。全体の流れとは、1局を通じた形勢の推移のことです。形勢は、駒の損得、駒の効率、玉の安全度、手番の4要素で決まります。4要素を総合的に考えて形勢の推移を把握します。
※小中学生には、4つの要素を同時に処理するのは難しいので、級位者は駒の損得の推移、有段者は駒の損得と効率を合わせた戦力差の推移、を形勢の推移と見立てるだけでも十分です。
2. 形勢に差が生じた原因、改善策を考える
将棋には、自分の好手で形勢をリードする、相手の好手で形勢を損ねる、のではなく、自分の悪手で形勢を損ねる、相手の悪手で形勢をリードさせていただく、という性質があります。よって、形勢に差がついた局面の付近に、自分や相手の悪手が存在します。その手を特定し、なぜその手が悪手なのか、その手はどのような思考プロセスで指されているのか、代替手は何なのか、代替手にはどう思考プロセスを修正すればたどり着くのか、を考えます。
※級位者の子は、駒の損得が生じてしまった原因と改善策、有段者の子は駒の損得と効率を合わせた戦力差の推移が生じてしまった原因と改善策を考えるだけでも十分です。
※低学年の子は、全体の流れをつかむのは難しいので、1を飛ばして2から入り、ここをこうした方が良かっただけでも十分です。
3. 将棋理論を押さえているのかを確認する
1,2だけでも十分ですが、1の全体の流れをつかむ時、最低限押さえるべき将棋理論を押さえているのかも合わせて確認します。その理論は、羽生さんの名著「上達するヒント」にほぼ網羅されています。(という背景があり、上達するヒントの音読は有効と繰り返しお伝えしています。)
-玉の安全度を確保してから(玉を囲ってから)戦う
-戦う時、弱い駒からぶつける
-狙い(自分の得)を持って指す、相手の攻めを待っているだけはダメ
のようなシンプルな理論です。
私自身の棋譜を自分で振り返る時は、現代の難しい将棋理論も用いて考えますが、こどもの将棋にはほぼ不要です。最低限押さえるべき将棋理論を押さえるだけ(実はこれが簡単なようで難しい…)で、遥か遠くまで行けます。
(特に有段者になったら)自身の棋譜からたくさんのことを学び取り、上達していってほしいですね。