「そもそも定跡って何ですか?」
先日、受講生の保護者からこのような質問をいただきました。
また、日々受講生と対局し、保護者とやり取りしていると、定跡を捉え方一つで指す将棋が全く異なるのを感じており、今回は定跡に対する私の考えを書きたいと思います。
定跡を私の言葉で定義すると、
「先人達が創り上げた見本となるいい指し方」
です。昔の上手な人が束になって、一生懸命に研究して、命をかけて対局を重ね、長い年月をかけてできた手順であり、上達するエッセンスが詰まっています。
(最近では、AIにより定跡の書き換えが進んでいますが、AIの手は難解なことが多く、こどもが将棋の基本を学ぶ上で重要ではないのでここでは割愛します。)
なので、定跡を学ぶ最大の目的は、
「将棋のいい手順の流れを感覚的に理解すること=自分が指した手順がいい手順の流れになっているか、感覚的にわかること」
です。
(もちろん、手順を覚えて自身の実戦に使う、のも目的の1つですが、最も重要なのは↑のポイントです。なぜなら、将棋は究極的には理屈さえ合っていれば何をやっても構わないからです。)
ただし、定跡を学ぶ時に、気を付けるポイントがあると考えています。
1, あくまで見本、正解手順と捉えない
日々、受講生の保護者とやり取りする中で、定跡を正解手順と捉えている方が一定数いらっしゃる気がします。しかし、正解手順と捉えると、その手順を覚えるだけで終わってしまい、その後は思考が停止しがちです。
定跡はあくまで見本となる手順です。まずはその手順をそのまま試してほしいですが、対局を何十局、何百局と重ねる中でその手順に自分なりの工夫を加え、改善していくことが可能です。
2. 細かな結論の変化を気にしない
「羽生の頭脳のこの変化は、その後に結論が変わっていると聞きました。どのように学習すればいいですか?」
先日、このような質問を受けました。
定跡は日々進化するものであり、よりいい手順が発見されれば結論が覆ります。なので、羽生の頭脳のような古い本に書いてある内容は、現代の目から見ると昔の結論であることがよくあります。
しかしそれは、こどもが将棋の基本を学ぶ上で、かつ、こどもが大会で将棋を指す上で、枝葉末節であり気にする必要は全くないことです。そんな些細なことで、こどもの将棋の勝敗は変わらず、全く影響はありません。
加えて、将棋の見本となる指し方を学び、いい手順の流れを感覚的に理解する、という目的から考えても、昔の手順、結論でも十二分にその目的は果たせます。
最新の手順、結論は棋力が高まり、実戦を重ねるうちに自然に身に付くことです。最初は細かなことを気にせず、基本書を教科書として、全体像をつかんでほしいです。
先週のブログで、まずは真似ることから始めてほしい!と書きましたが、定跡の手順を覚え、意味を理解するだけで、先人達が歩んだ歴史を手に入れることができます。こんなに効率的、効果的な学習法は他にありません。
興味を持って定跡を学んでほしいですね!