理解できる戦法、指し方が上達につながる

昨日、Xに投稿したところ、上野裕和六段から「その線引きはどうやって決めればよいか?」と質問をいただきました。Xの限られた文字数では回答するのに限界があるのでブログにします。



まずは、この話の背景について、

手の意味を理解できる戦法や指し方をすることが上達につながる、と考えています。

将棋は手を覚えてしまえば、その手をそのまま指せてしまうという特性があります。しかし、手の表面的な暗記だけでは対局後に検証と改善のしようがなく、上達が限られます。(話がそれますが、暗記だけでは相手が変化してきた時に対応できない、という問題点もあります。)

加えて、

こどもが理解できることには限界がある、と考えています。

全国大会で活躍するような子でも、難解な現代将棋理論を理解して実践するのは難しい、という感触を持っています。私自身もこども2人(中1息子、小6娘)を育てており、日々将棋以外のやり取りをしていますが彼らは難しいことはわからないです。

次に具体例について挙げると、

“攻めは飛角銀桂、守りは金銀三枚”という有名な格言があります。これは、四枚で攻める、金二枚+銀一枚で守るという意味で「攻め駒と守り駒を分ける」という理論からきています。

一方で、現代将棋の根底にあるのは「攻めと守り両方の役割を担わせる」という理論と認識しています。同じ駒でも、ある変化では守り駒になり、別の変化では攻め駒になるという状況による役割の変化が頻繁に発生します。

まずは前者を身に付けてほしいと考えています。後者の役割の変化は、全国大会で活躍するような子でも理解して実践するのは難しいです。

「攻めと守り両方の役割を担わせる」という難解な現代将棋理論で成り立っている戦法の代表格が現代の角換わり腰掛銀です。藤井聡太七冠の十八番ですが、理解するのも教えるのも本当に難しいと感じています。(しかし、全国大会や研修会のレベルになると避けて通れないという事情もあり… 日々試行錯誤しています。)

角換わりでは棒銀や早繰銀であれば「攻め駒と守り駒を分ける」という理解しやすい理論で成り立っています。まずは、理解しやすい戦法や指し方を学ぶことをおススメしたいです。

この他、攻め方の理論(数の攻め/技の攻め)、守り方の理論(玉を囲う/玉を相手の飛から遠ざける)、攻め駒の枚数の理論(4枚の攻め/3枚の攻め)などありますが、エンドレスになってしまうので… 割愛します。



話を整理すると、手の意味を理解できるか否か、で線引きします。こどもが意味を捉えられるのは、昔ながらのわかりやすい将棋理論からなる戦法、指し方が多いです。理解できることを少しずつ広げていくと、最終的にプロ棋士が指すような難解な現代将棋理論からなる戦法や指し方を指せるようになります。理解できない難しいことにチャレンジして、手をなぞるだけにならないように気を付けてほしいです。

念のために書くと、現代の全ての戦法がこどもが学習する対象にならない、昔の全ての戦法がこどもが学習する対象になる、と言っているわけではありません。

日々の学習の参考になれば幸いです。