将棋教室のきっかけとなった原体験

今から7年前、会社の研修でオランダの首都アムステルダムに出張した時の話です。少し空いた時間があったので、アムステルダム国立美術館に立ち寄りました。17世紀のオランダの絵画を中心に小一時間ほど鑑賞していると、宗教画と肖像画の大きな2つのカテゴリがあることがわかりました。そこで、ある一つの疑問が思い浮かび、美術館のスタッフの人に質問しました。

「画家は、宗教画と肖像画をそれぞれ何のために描くんですか?」

「宗教画は社会に何らかのメッセージを発信するため(自己実現のための仕事)、肖像画は生活のため(お金を稼ぐための仕事)です。」

画家は、その時代や社会に対して伝えたい思いを、宗教画という形で発信する。しかし、それだけでは生活できず、その時代の権力者や有力者の肖像画を描き、生活の糧を得る。この回答を聞いた瞬間にハッとなりました。

-仕事を複数持ち、お金、やりがい、創りたい世界の実現などを別々の仕事から得るのは不自然ではない事
-お金のためだけでなく、思いを表現するための仕事が必要な事
-仕事の価値(=対価)は時代によって変わり、その時点の価値が低かったとしても、将来的な価値は全くわからない事
-どんな仕事でも、工夫次第でお金を得る方法が必ず存在する事

など、たくさんの事を学び、私の人生観、職業観に与えた影響は計り知れません。

そして、そこから導き出された行動原理は、周りに流されず自分の気持ちに正直に生きる、でした。

時代毎に、社会では模範とされる生き方や働き方が存在し、国や会社や学校はその方向性に導こうとします。また、その時代毎に、お金を得やすい仕事とそうでない仕事が存在します。

しかし、その流れに合わせるよりも大切なのは、価値観に合わせて自分にとって心地良い生き方や働き方を追求する事だと思います。社会の方向性に自分の価値観が合っていればその流れに乗ればいいし、もし価値観が合ってなかったとしても自分の気持ちに正直に生きればいいでしょう。いろいろな生き方を担保する厚みが社会には備わっていると思っています。

今、私は会社員として働きながらこの将棋教室を運営しています。これからも、その時々の自分の価値観に合わせて柔軟に変化していこうと思っています。こういう生き方もありだよ。なかなか面白いでしょ!、と自分の2人の子供や受講生に胸を張って言えるよう、これからも頑張っていきたいですね。

※美術は全くの初心者で、業界の常識や事実と異なっているかもしれません。ご了承ください。