駒の方向性

先週末は、木村一基王位をお招きしてイベントを開催しました。ご参加いただいた皆さまありがとうございました!

その大盤解説の中で、「今のプロの将棋はセオリー外の手が多すぎ、子供のうちは基本に忠実に指した方が良い」という話がありました。

基本とは、”守りは金銀3枚””攻めは4枚(飛角銀桂)””安易に手損、駒損をしない””飛と玉を反対の位置に置く”などいろいろありますが、今日は、基本の1つであり、伸びしろに直結し、子供大会の勝敗決定要素でもあり、現代将棋でも機能する「駒の方向性」について書きたいと思います。

将棋は王を取ったら勝ちのゲームなので、守り駒であれば自玉に、攻め駒であれば敵玉に近ければ近いほど駒の価値が高まります。よって、大雑把に言うと、駒が玉に近づけば好手、駒が玉から遠ざかれば悪手なんですね。

そこで、駒が玉に向かっていく例をの羽生さんの若手時代の将棋から取り上げると、

「羽生-安西戦 1989/5/8 竜王戦」
▲6五銀 △3九桂成 ▲7四銀

※▲8四角を狙って▲6五銀、△3九桂成は先手玉から遠ざかる手(後手から見ると不本意な手)、▲7四銀は後手玉に近づく手(▲5四銀は駒得はできるが後手玉から遠ざかり迫力の無い手)

「羽生-大内戦 1988/9/27 棋王戦」
▲6一金 △同金 ▲同成桂

※▲7一同成桂 △同玉 ▲52金は、△9四歩と突かれて後手玉が9筋まで逃げる事を考えると後手玉から一路遠ざかる手(攻め駒が6筋から5筋に移動し、先手から見て不本意な手)、▲6一金は攻め駒を6筋にキープしておき敵玉にしがみつく手

「羽生-桜井戦 1989/3/17 竜王戦」
▲5三銀 △4八香成 ▲3三飛成 △同 桂 ▲4三歩

※▲3三飛成が、遊んでいる4八の銀を取らせている間に敵玉に迫る手(▲4八同飛もあるが寄せのチャンスを逃す)、▲4三歩で▲5二銀打 △3一玉 ▲6一銀不成は、攻め駒が敵玉から遠ざかる手、▲4三歩の方がより良い寄せ方で、▲同金は▲5二銀打 △3二玉 ▲4三銀成 △同玉 ▲4四金 △3二玉 ▲3四歩、▲3一玉は▲4二金 △2二玉 ▲3二金 △同玉 ▲4二歩成 △2二玉 ▲3二金 △1二玉 ▲3三金で寄り

ぜひ盤に並べて確認してみてください。駒が玉から遠ざかる手は一手も指しておらず、駒の方向性をとても重視していることがわかると思います。もし普段から棋譜並べをしている子がいれば、棋譜からこの駒の方向性を感じ取ってほしいと思います。この考え方がわかれば、飛躍的に棋力が伸びると確信しています!