先週末は、「テーブルマークこども大会」の東京大会でした。ご参加の皆さま、大変お疲れさまでした。
その低学年の部、高学年の部の決勝戦2局が終わった後、「将棋日本シリーズJTプロ公式戦」の決勝戦、豊島将之JT杯覇者 対 藤井聡太竜王の対局が行われました。
現代の頂上決戦を生で観て、様々なことを学びましたが、その中で最も強く感じた”遊び心”について書きたいと思います。
決勝戦は、角換わりの最新形の1つになり、お互い相手の言い分はほとんど聞かず我が道を行き、途中から最強手で殴り合う猛烈な攻め合いになりました。
「なんて遊び心のある将棋なんだろう…」
当然、1手1手は極めて洗練された手の連続ですが、戦い方は将棋を覚えたばかりのこども同士の対局のようでした。一般的に、将棋は強くなればなるほど、相手の狙いを考えて攻めたい気持ちを我慢して受けに回ったり、事前に相手の狙いを封じたり(将棋用語で”手を殺す”と言います)します。しかし、この対局では、お互いノーガードで殴り合ったのです。
この決勝戦、豊島JT杯覇者には連覇かかり、かつ、虎の子の竜王位を奪われた直後で、ここで負けると対藤井戦で8連敗を喫する大きな勝負でした。対して、藤井竜王にはJT杯初優勝がかかり、かつ、ここで豊島JT杯覇者を叩いておけば、今後の直接対決で圧倒的に優位に立てる重要な一局でした。
しかし、いざ始まってみると、双方そんな背景はお構いなしにやりたい手を繰り出し合う展開になりました。そこには、負けに対する恐れや名誉や金銭に対する執着心は全くありませんでした。
強くなるということを目標に据えて取り組んでいければ…
藤井聡太竜王
これは、藤井聡太竜王がプロ棋士になってから一貫して言及している目標で、全くぶれていない事に尊敬の念を抱いています。
一方で、将棋が強くなってくると、勝敗やレーティングの上下、この教室で言えば詰将棋の宿題の点数や順位が気になってくる傾向があります。
しかし、それらは結局のところ他人との比較であり、将棋を始めた時の気持ちとは対極に位置する考え方であり、あまり本質的ではないと思っています。
重要なのは、遊び心を持ちつつ、過去の自分よりも成長した自分になること。将棋で言えば、将棋を楽しみつつ、棋力を高めたり、何らかの新しい発見をしたり、することではないでしょうか。
そんな当たり前ながら、実践が極めて難しい、重要な事を気付かせていただいた決勝戦でした。