先週末は、小学生名人戦東日本大会と低学年ドラ王座戦(A、B級)でした。久しぶりのリアル大会に参加された皆さま本当にお疲れさまでした。
大会後は、必ず振り返りをしてほしいと思っています。この手が悪くてこう指すべきだった、と局面の振り返りをするのも良いですし、終盤の寄せが上手くいかなかったから、寄せの勉強を重点的にしよう、と日々の練習に落とし込むことができればなお良いと思います。
今回は、この2つの大会から思い出した言葉があったのでご紹介します。
「少しずつ前へ進む」
これは、日本将棋連盟が東日本大震災からの復興を支援するために販売した扇子で羽生さんが揮毫した言葉です。大好きな言葉で、重要な対局でよく使っています。
では、この言葉はどういう意味なのでしょうか? 扇子を販売した目的から、被災地の復興を少しずつ前へ進める、という意味があると考えられます。さらに、震災復興に加えて、将棋に関係する意味も込められていると考えています。
1点目は、棋力も含めた自身の成長についてです。将棋に取り組んでいると、また、将棋に取り組むこの教室の受講生を見ていると、成長は一歩ずつだと感じています。三歩進んで二歩下がるのは当たり前ですし、場合によっては、三歩進んで三歩下がったり、二歩しか進まず三歩下がることさえあり得ます。その中で求められるのは、詰将棋や実戦など日々すべきことに淡々と取り組む姿勢です。成長の度合いを自身でコントロールするのは難しいので、コントロール可能な自身の毎日の行動に意識の焦点を当てるのが良いと考えています。
2点目は、将棋の形勢についてです。将棋を指していると、毎局、優勢か劣勢に必ずなります。ただし、将棋は優勢になったとしても簡単に勝てないゲームですし、劣勢だったとしても簡単に負けにならないゲームです。優勢な側は、決して楽観せず、一手で勝ちを目指さず少しずつ優勢を拡大していく繊細さが求められますし、劣勢な側は、決して諦めず、一手で逆転を目指さず少しずつ差を詰めていく我慢強さが求められます。(この話は、囲碁棋士の張栩さんの名著「勝利は10%から積み上げる」に詳しく載っています。ぜひご一読ください。)
成長や一勝を得るのは本当に大変で貴重です。そのために、日々の取り組み、一局一局、一手一手を大切にして少しずつ前へ進んでほしいと思います!