先週末の4連休は全国各地で多くの大会が開催され、いい報告がたくさん届きました。そこで今回は、結果が出た時の気持ちの持ち方について書きたいと思います。
「勝負事をする上で最大の敵は、慢心、酒、そして女だ!」
高校生の時、師匠に将棋を教わり、結果が出始めた時に強く言われた言葉で、今でも心に残っています。
(最後の女性については、SDGsなどでジェンダーの平等が掲げられる現代では問題発言かもしれませんが、昭和の香りが残る言葉としてお許しください。)
高校生なりに考えた結果、その中で、最も難しいのが、慢心、心のコントロールだと思いました。お酒は高校生にとって無縁で、家族の体質的にも飲めませんし、その頃は将棋が一番の恋人でしたし(笑)。しかし、相手がいる競技で勝てば相手よりも上回ったという高揚感をどうしても感じてしまう中、たくさん勝った後に自惚れといかに付き合うか、なかなか解決策を見出せませんでした。
その答えが朧気ながら見えたのは、大学3年生で大学将棋部の主将を務め、学生王座戦(団体戦)で絶対に勝たなければいけない勝負を経験した時でした。そのような鬼勝負に向けて極限状態まで自分を追い込むと、他人を打ち負かして得た実績、相手との棋力差や相性などはどうでもよくなり、自分の実力を出し切ることのみに集中しようという晴れた気持ちになったのです。
この経験をしてから、慢心などの勝負事において毒にしかならない心の変化は、他人との比較によって生まれるもので、自分ではコントロールできない他人の事を気にするより、自分自身に集中した方がよほど効果的だとわかりました。
-対局中は、取り組んできたこと、自分の実力を出し切ることのみに集中する
-日々の練習では、昨日の自分より少しでも成長することのみに集中する
とても難しく、私もいつも出来ているわけではありませんが、このようにありたいと思っています。
最後に、藤井聡太二冠が棋聖戦で初防衛を果たした時のコメントを紹介します。これも、他人との比較ではなく、自分自身を少しでも高めるという気持ちの表れだと思います。
―藤井棋聖は記録であるとか、数字であるとか、段位であるとか、勝負の世界に生きるものであったら誰もが追い求めるものに、あまり興味を示されないかと思います。それはどうしてでしょう?
藤井「結果ばかりを求めていると、それが出ないときにモチベーションを維持するのが難しくなってしまうのかなと思っています。内容を重視して、1局指すごとに新しい発見をして改善するというのがモチベーションにつながると思っています。」