勝敗は違いから生まれる

「結局のところ、勝敗は何から生まれるんだろう?」

中学2年生から将棋を始めて10年ほど経ち、高校、大学、アマの各大会で何度か日本一になった時、このような”問い”が頭にふと浮かびました。

読む力、序盤の研究量、中終盤力、メンタルの強さ、思考体力…

将棋は様々なスキルを求められる=総合力を問われるゲームで、何を伸ばせば結果に結びつくのか、とてもわかりにくい。では、何が勝敗を分けるのか? 不思議に思ったのです。

しかし、哲学的な問いで、自分で考えるだけでは答えが出ず、時間だけが過ぎていきました。

きっかけになったのは、社会人になって興味を持って読み始めたビジネス書でした。ある日、ハーバード大教授で経営学者のマイケル・ポーターさんの本を読んでいると、競争優位を築くための3つの戦略の話が目に留まりました。

ポーターの3つの基本戦略
・コスト・リーダーシップ戦略
・差別化戦略
・集中戦略

詳細な説明は省きますが、この戦略のポイントは何かと自分なりに考えると、

・競合他社との差を生み出すこと
・その差は、顧客が価値を感じて初めて意味をなすこと

だと思いました。その時、これらのポイントは将棋にもそのまま当てはまると気づきました!

・何らかの要素で、競争相手との差を生み出すこと
・差を付けたその要素が、勝敗との関わりが大きければ大きいほど有利に働くこと

これが、この教室で受講生に指導するにあたって常に頭の中にある私の勝負観です。

次に、この勝負観の活用例を紹介すると、、、

“重要な対局の後、棋譜を残し、AIで形勢を損ねた局面、代わる手を調べて反省した。”

このような行為は、未来の勝ちにつながると言えるでしょうか?
時間をかけて棋譜を取り、AIで原因を探ろうとする頑張り自体は認めますが、、、

・一定以上の棋力になれば、AIで調べている子はたくさんおり(道場や大会で良く見る光景です) AIだけに頼って検証するだけではライバルとの差は生まれません。
・その局面の評価値、最善手(に近い手)を知ったところで、同じ局面になる確率は極めて低く、未来の勝敗にあまり関係がありません。

よって、勝負の観点から言うと、勝ちにより近づく=勝率を高める営みとは言えないと考えています。

(こどものうちからAIを使うのは全く推奨しませんが、もし使うのであれば…) AIの示した手にどのような特徴があるのか、どのような読み、判断で局面を捉えればその手に至るのかを考えたり、なぜその評価値になるのか理由を掘り下げてみる。

ここまですると、その行為自体が少数派、かつ、学びに汎用性があるので未来の勝敗に大きく関係し、価値が生まれます。

お伝えしたいことは、AIを使う/使わないではなく、競争相手との違いを生み出し、その違いが勝敗決定に関わって初めて意味をなす、という原理です。


正直に書くと、小中学生の棋力であれば、やるべきことを積み重ねて、理解すべきことを理解しさえすれば、それだけでライバルとの違いが生まれます。そこに、↑のようなせこせこした考え方(笑)は全く必要ありません。

もう少し年齢を重ねた時に、将棋を通して、このような戦略的な考え方を知ることが出来ると、将来どんな分野に進んだとしても活きるはずです!

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